公開日 2026年03月31日
改正法の概要
令和6年(2024年)5月17日に、父母が離婚した後もこどもの利益を確保することを目的として、民法等の一部改正法が成立しました。
この改正法は、父母が親権や婚姻関係の有無にかかわらず、こどもを養育する責務を負うことなどを明確化するとともに、親権、監護、養育費、親子交流、養子縁組、財産分与などに関する民法等の規定を見直すものであり、令和8年4月1日に施行されます。
親の責務に関するルールの明確化
親権や婚姻関係があるかどうかに関わらず、こどもを育てる責任と義務についのてルールが明確化されました。
こどもの人格の尊重
こどもが心も体も元気でいられるよう育てる責任があります。こどもの利益のために意見をよく聞き、人格を尊重しなければなりません。
こどもの扶養
こどもを「養う」責任があり、その水準はこどもが親と同程度の生活を送ることができる程度でなければなりません。
父母間の人格尊重、協力義務
お互いを尊重し、協力し合う義務があります。下記のような行為はルールに違反する場合があります。
・暴力や相手を怖がらせるような言動等
・他方の親によるこどもの世話を不当にじゃますること
・特段の理由なく他方に無断でこどもの住む場所を変えること
※暴力や虐待からの避難など、急迫の事情がある場合を除く
・特段の理由なく約束した親子交流の実施を拒むこと
違反した場合は、親権者の指定又は変更の審判、親権喪失又は親権停止の審判等において、その違反内容が考慮され、違反した者に不利となる可能性があります。
こどもの利益のための親権行使
親権(こどもの世話や教育、財産の管理を行う権利や義務)は、こどもの利益のために行使しなければなりません。
親権に関するルールの見直し
父母の離婚後の親権者
1人だけが親権を持つ【単独親権】のほか、父母2人ともが親権を持つ【共同親権】の選択ができるようになります。
親権者の定め方
①協議離婚の場合
父母が話し合いによって単独親権とするか共同親権とするかを決めます。
②父母の協議が調わない場合や裁判離婚の場合
家庭裁判所が父母とこどもの関係や、父と母の関係などを考慮した上で、こども利益を考え、親権者をどちらか1人【単独親権】にするか2人【共同親権】にするかを定めます。この手続きでは、家庭裁判所は父母それぞれから意見を聴取しなければならず、こどもの意思を把握するように努めなければなりません。
また、次のようなケースでは家庭裁判所は共同親権と定めることはできません。
・虐待のおそれがあると判断された場合
・DVのおそれやその他の事情で、父母が共同して親権を行うことが難しいと判断された場合
※身体的な暴力を伴う虐待・DVだけとは限りません。
※これらの場合以外にも、共同親権と定めることでこどもの利益を害すると認められるときは、裁判所は必ず単独親権と定めることとされています。
親権者の変更
離婚後の親権について、こどもの利益のために必要があると認められるときは、家庭裁判所がこども自身やその親族の請求により、親権者の変更(父母の一方から他の一方/一方から双方/双方から一方)をすることができます。離婚前の父母間に一方からの暴力等があり、対等な立場での取り決めではなかった場合では、こどもにとって不利益となるおそれがあるため、この手続きで親権者を改めることができます。
親権の行使方法(父母双方が親権者である場合)
父母双方が親権である場合のルールが明確化されており、父母が共同で行います。
単独行使が可能な場合
①監護及び教育に関する日常の行為をするとき
食事や服装の決定、短期間での旅行、予防接種や習い事などは、共同親権でも1人で決めることができます。
②こどもの利益のため急迫の事情があるとき
DVや虐待から避難する必要がある場合や、こどもに緊急の医療行為を受けさせる必要がある場合、入学試験の結果発表後に入学手続きの期限が迫っているような場合など、日常の行為にあたらないものでも、父母のどちらも1人で決めることができます。
共同行使
こどもの転居、進路に影響する進学先の決定、心身に重大な影響を与える医療行為の決定や財産の管理など、こどもの将来に大きく関わることは、父母で話し合って決めることが原則です。なお、父母の意見が対立するときは、家庭裁判所で、父母のどちらか一方でその事項を決めることができるようにする裁判を受けることもできます。
※父母間で合意がない場合は、裁判所が関与します。
養育費の支払い確保に向けた変更点
合意の実効性の向上
養育費債権に「先取特権」と呼ばれる優先権が付与されるため、債務名義(公正証書や調停証書、審判書など)がなくても、養育費の取り決めの際に父母間で作成した文書に基づいて、差押えの手続きを申し立てることができるようになります。
※改正法施行後に発生するものが対象です。
法定養育費
離婚時に養育費の取り決めをしていなくても、取り決めるまでの間、こどもが暮らす親が他方の親へ、こども1人あたり月額2万円の養育費を請求できる制度です。離婚後もこどもの生活を守ることができるよう設けられました。養育費の暫定的、補充的なものであり、父母の協議や家庭裁判所の手続きにより、各自の収入などを踏まえた適正な額の養育費の取り決めをしていただくことが重要です。
※法定養育費は、父母間で取り決めるべき養育費の標準額や下限額を定める趣旨のものではありません。
裁判手続きの利便性向上
家庭裁判所は、養育費に関する裁判手続きをスムーズに進めるため、収入情報の開示を命じることができることとしています。また、養育費を請求する民事執行の手続きでは、地方裁判所に対する1回の申立てで財産の開示、給与情報の提供、判明した給与の差押えに関する手続きを行うことができるようになります。
安全・安心な親子交流の実現に向けた見直し
こどものことを最優先に、親子交流や父母以外の親族との交流に関するルールが見直されました。
親子交流の試行的実施
家庭裁判所の手続き中に親子交流を試行的に行うことができます。家庭裁判所は、こどもの利益を最優先に考え、実施が適切かどうかや調査が必要かなどを検討し実施を促します。
婚姻中別居の親子交流
父母が婚姻中にこどもと別居している場合の親子交流は、こどもの利益を最優先に考えることを前提に父母の協議で決め、決まらない場合は家庭裁判所の審判等で決めることがルールとなります。
父母以外の親族とこどもの交流
祖父母など、こどもとの間に親子関係のような親しい関係があり、こどもの利益のため特に必要があるといった場合、家庭裁判所はこどもが父母以外の親族との交流を行えるようにできます。
詳しくは、法務省公式ウェブサイトをご確認ください。
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00357.html
(民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について〔令和8年4月1日施行〕

