登別市まちづくり基本条例(素案)解説

公開日 2013年03月13日

章名 条項 解説
前文 私たちの登別市は、カムイヌプリをはじめとする多くの山々と多くの川が流れ注ぐ太平洋に囲まれ、さらにアイヌ神謡集にも謡われた自然豊かなまちです。また、登別市は、世界各国から多くの人が訪れる泉源豊富な湯のまちでもあります。
このような自然豊かなまちを後世に引継ぐことは、私たちの責任であることを市民誰もが深く認識するとともに、これからの個性的で魅力あるまちづくりには、自己決定・自己責任のもと、市民が一体となって取組むことが求められています。
そのためには、多くの市民がまちづくりに参画できる仕組みが必要であることから、この条例を制定するものです。
 
第1章
総則
(目的)
第1条 この条例は、地方自治の本旨に基づき、登別市のまちづくりの基本理念を明らかにするとともに、まちづくりの主体者である市民、行政及び議会のそれぞれの役割や責任を明確にし、互いが協働して創造的、持続的なまちづくりを推進し、公正・公平を原則とする開かれた市民自治の実現を図ることを目的とする。
【解説】
この条項は、市民がまちづくりの主体であり、市政の主権者であることと、この条例の目的が「公正・公平を原則とする開かれた市民自治の実現」であることを明らかにしているものです。
また、「市民自治の実現」とは、憲法第92条に規定されている「地方自治の本旨」についての一般的な考え方である「住民自治」と「団体自治」の二つの意味における地方自治を確立することをいいます。
(まちづくりの基本理念)
第2条 まちづくりの基本理念は、次に掲げるものとし、市民及び市はこの理念に基づきまちづくりを推進しなければならない。
(1)市民は、市民自治を実現するために自ら学び、市民の権利を行使し、まちづくりに積極的に参画するよう努めること。
(2)市は、市民の知る権利を保障するとともに、十分な説明責任を果たし、まちづくりに関する情報(以下「情報」という。)を提供すること。
(3)市は、市民の参画の意欲を高めるように啓発に努めるとともに、まちづくりのそれぞれの過程において、市民の参画の機会を保障すること。
(4)市民、関係自治体、道及び国との役割分担を明確にするとともに協働・協力によって、登別市の課題の解決を図ること。
(5)市は、時代のニーズに適応した政策形成を図るために、総合計画、財政運営及び行政評価等の政策活動に必要な制度の確立及び運用の原則を明らかにすること。
(6)市は、市民にわかりやすい簡素で効率的な行政組織を編成するとともに、市職員の政策形成能力の育成・向上に努めること。
【解説】
この条項は、まちづくりへの市民参画及び市政運営のあり方など、この条例における基本原則を総体的に定め、これに基づきまちづくりを推進しなければならないことを定めているものです。
第2章
情報の公開と共有
(情報を知る権利)
第3条 市が保有する情報は市民の財産であり、私たち市民はそれを知る権利を有する。
【解説】
この条項は、市民と市がまちづくりに関する情報を財産として共有するという考えの柱となるもので、この情報についての市民の知る権利を保障しているものです。
(情報の提供)
第4条 市は、市が保有する情報を市民にわかりやすく提供するとともに、市民が迅速かつ容易に取得できるよう整理し、保存しなければならない。
2 市は、提供した情報に対する市民からの意見、提言等をまちづくりに反映するよう努めなければならない。
3 市民は、提供された情報を積極的にまちづくりに生かさなければならない。
【解説】
この条項は、市が保有するまちづくりに関する情報の取り扱いと、まちづくりを進めるうえでの市と市民の情報の活用について、定めているものです。
(説明・応答責任)
第5条 市は、市政運営にあたって、公正の確保と透明性の向上を図るため、市民にわかりやすく説明する責務を有する。
2 市は、市政運営に関する市民の質問等に対し、誠実に応答する責務を有する。
【解説】
この条項は、市が市政運営にあたって、公正の確保と透明性の向上を図るため、市民に仕事の内容を具体的に説明する責務があることと、質問等に応答する責務があることを定めているものです。
(個人情報の保護)
第6条 市は、個人の権利及び利益が侵害されることのないよう、個人情報の収集、利用、提供、管理等に関して必要な措置を講じなければならない。
【解説】
この条項は、市が保有している個人情報を保護するための方針を定めているものです。
市は、個人情報の提供等を行う場合の必要な措置として、別に詳細を定めた登別市個人情報保護条例を設けています。
第3章
市民参画の推進
(市民参画の権利と責任)
第7条 私たち市民は、男女の区別なく何人も自由、平等な立場でまちづくりに参画する権利を有する。
2 私たち市民は、自らの発言と行動に責任をもって、まちづくりに参画するよう努めなければならない。
3 私たち市民のまちづくり活動への参画に関しては、自主性や自律性が尊重されるものであり、何人からも不当な関与や不利益を受けない。
【解説】
この条項は、市民の権利として、市民が主体的にまちづくりに参画できることを保障しているものです。
また、市民は自ら責任をもって参画することと、誰からも不当な関与や不利益を受けないことを定めているものです。
(参画機会の保障)
第8条 市は、市民参画によるまちづくりを推進しなければならない。
2 市は、案件ごとに市民参画の仕組みを明らかにし、市民が参画しやすい環境を整備しなければならない。
【解説】
この条項は、市が市民にまちづくりへの参画機会を保障するため、環境整備を図らなければならないことを定めているものです。
(市民投票制度)
第9条 市は、まちづくりに関わる重要事項について、直接、市民の意思を確認するため、市民投票制度を設けることができる。
2 市民投票の実施に関し必要な事項は、それぞれの事案に応じ、別に条例で定める。
【解説】
この条項は、市がまちづくりを進める上で重要な政策判断が必要な事項については、市民に対する最終意思確認の手段として、市民投票制度を設けることができることを定めているものです。
事案により、投票資格者の範囲が異なる場合等もあることから、市民投票の実施に関し必要な事項は、事案ごとに個別条例で定めることとしているものです。
第4章
連携と協力
(コミュニティ)
第10条 私たち市民は、暮らしやすい地域社会を築くために、居住地、関心又は目的を共にすることで形成されるつながり、組織等(以下「コミュニティ」という。)をそれぞれの自由意思に基づいて形成することができる。
2 私たち市民は、地域社会の担い手であるコミュニティの役割を尊重するとともに、守り育てるよう努めるものとする。
3 市は、コミュニティの自主性及び自立性を尊重しながら、コミュニティに関わる施策を推進し、必要に応じて支援することができる。
【解説】
この条項は、市民が町内会、ボランティア組織、NPOなどのコミュニティを主体的に組織することができることと定めているものです。
また、市民は、そのコミュニティを守り育てるとともに、市は、必要に応じ支援できることを定めているものです。
(市外の人々との連携)
第11条 私たち市民は、社会、経済、観光、文化、学術、芸術、スポーツ、環境等に関する取組を通じて、市外の人々と連携・協力するとともに、市外の人々の意見や提言をまちづくりに活用するように努めなければならない。
【解説】
この条項は、市民が様々な分野での主体的な取組を通じて、観光客をはじめ、市外の人々と連携・協力し、そこから生まれる意見や提言をまちづくりに有効活用していくことを定めているものです。
(国及び関係する自治体等との連携)
第12条 市は、まちづくりを進めるにあたり、国及び関係する自治体等との連携・協力に努めなければならない。
【解説】
この条項は、行政区域を越えた課題の解決等を図るため、国や関係する自治体等との連携・協力に努めなければならないことを定めているものです。
(国及び道への意見・提案)
第13条 市は、国及び道と対等・協力の関係にあることを踏まえて、自らの公共課題の解決を図るとともに、登別市の自主的、自立的発展のために、国及び道に対して政策及び制度の改善等に関する意見・提案を積極的に行うものとする。
【解説】
この条項は、国及び道との公共課題の解決を図るとともに、市の自主的、自立的発展のため、国及び道に意見・提案を積極的に行うことを定めているものです。
(国際交流活動)
第14条 市民、市及び議会は、国際社会における自治体の責任と役割を深く認識し、まちづくりにおける国際的な交流・連携に努めるものとする。
【解説】
この条項は、市民、市及び議会は、平和、人権、環境及びエネルギー等の地球規模の諸問題について、国際社会における自治体としての責任と役割を深く認識し、まちづくりにおける国際的な交流及び連携に努めることを定めているものです。
第5章
行政の政策活動
(総合計画)
第15条 市は、市の将来のあるべき姿を明らかにする基本構想及び基本構想を実現するための基本計画(以下「総合計画」という。)を広く市民の参画のもとに策定しなければならない。
2 基本計画を具体的に実施するにあたり、実施計画を策定する。
3 実施計画は、行政評価や財政状況を踏まえて策定しなければならない。
4 実施計画において実施する政策は、一覧表で表示するとともに、市民にわかりやすく公表しなければならない。
5 総合計画以外に特定の政策分野における基本的な方向を明らかにする個別計画等を策定する場合は、総合計画との整合性を図るものとする。
【解説】
この条項は、まちづくりを進めていくための指針である総合計画の策定にあたって、市民参画で行わなければならないことを定めています。
また、基本計画を具体的に実施するため、社会経済情勢等を捉え、時代のニーズに的確に対応する実施計画の策定についての方針を定めるとともに、総合計画が市の計画として最上位であることを定めているものです。
(財政運営等)
第16条 市は、財政運営にあたって、常に健全財政を旨とし、最少の経費で最大の効果をあげるように努めなければならない。
2 市の予算は、財政状況を勘案し、市民の意向を踏まえて編成しなければならない。
3 市は、毎年、収支や財産、負債などを含む、財政状況を公表しなければならない。
4 市は、市民負担のあり方や市有財産の活用等の検討とともに、市の自立的な財政基盤の強化に努めなければならない。
【解説】
この条項は、市の財政運営にあたって、市税等の貴重な財源を効果的に活用するよう努めなければならないことを定めています。
また、併せて、市民の意向を踏まえた予算編成、財政状況の公表、財政基盤の強化について定めているものです。
(行政評価)
第17条 市は、行財政運営を効果的、効率的に行うとともに、透明性を高め、説明責任を果たすため、市民参画による行政評価を実施しなければならない。
2 市は、行政評価について、できる限り客観的な手法を用いて実施することとし、その結果を公表するとともに、まちづくりに反映させるものとする。
【解説】
この条項は、行財政運営における行政評価の必要性を示すとともに、行政評価の手法等について定めているものです。
第6章
行政組織と職員
(行政組織の編成)
第18条 行政組織は、市民にわかりやすいものであると同時に、社会経済情勢等の変化に的確に対応できるよう編成しなければならない。
2 市は、職員定数の適正化計画を定め、効果的、効率的な行政運営に努めなければならない。
【解説】
この条項は、行政組織について、市民にわかりやすく、社会経済情勢等の変化に対応したものとするため、常に見直しをしていかなければならないことを定めているものです。
(危機管理)
第19条 市は、災害等から市民の生命、身体及び財産を守るために、市民、関係機関との連携・協力及び相互支援による危機管理体制の構築に努めなければならない。
【解説】
この条項は、危機管理の方針として、災害等から市民の生命や財産等を守るため、不断に市民、関係機関との連携・協力等による危機管理体制を構築することを定めているものです。
(職員)
第20条 市は、時代の変化により生じる政策課題を解決するため、職員の政策形成能力の育成・向上を図る研修の充実に努めなければならない。
2 市は、職員が市民とともにまちづくりに参画する環境の整備に努めなければならない。
【解説】
この条項は、市が時代の変化に対応できる職員を育成するため、政策形成能力等の研修を充実させることを定めています。
また、職員は同時に一市民であり、市民相互の連携を図り、主体的にまちづくりを進める使命があることから、市は職員が容易にまちづくりに参画できる環境の整備に努めることを定めているものです。
(出資団体等)
第21条 市は、出資や補助、事務事業の委託または職員を派遣している団体に対し、必要に応じて、当該団体の運営体制等に関する情報の開示を求めることができる。
2 前項の場合において、当該団体は市に協力しなければならない。
【解説】
この条項は、市が出資等をしている団体に対して、必要に応じて当該団体の運営体制、事業展開、経営状況等に関する情報の開示を求めることができることを定めています。
また、当該団体はその情報の提供に協力しなければならないことを定めているものです。
第7章
議会の役割
(議会の役割と責務)
第22条 議会は、広い視野に立ってまちづくりの課題を明らかにし、自由に議論をするよう努めなければならない。
2 議会は、市民を代表して最終的意思を決定する議決機関として、市民の意思が市政の運営に反映するよう活動しなければならない。
3 議会は、市民のニーズに対応した政策立案に積極的に努めなければならない。
4 議会は、市の事務事業が公平・効率的に執行されているかどうか、市民の立場に立って監視し、けん制しなければならない。
5 議会は、議会改革に努め、議会の持つ情報を市民と共有できるように努めなければならない。
【解説】
この条項は、議会がその役割と責務として、広い視野に立ってまちづくりの課題を明らかにし、自由に討議するよう定めるとともに、意思決定、政策立案、監視機能、情報公開について定めているものです。
第8章
市民、市長、議員及び職員の責務
(市民の責務)
第23条 私たち市民は、まちづくりの主体であることを認識し、互いに協力・助け合いながら、まちづくりの基本理念に基づき、市との協働のまちづくりを進め、市の発展に寄与するよう努めなければならない。
【解説】
この条項は、市民は、まちづくりの主体的な担い手であるという自覚と、互いに協力し助け合うなど思いやりを持って、まちづくりの基本理念のもとに一人ひとりの役割を果たしながら、市と協働して市の発展に寄与していくことを定めているものです。
(市長の責務)
第24条 市長は、まちづくりの基本理念を遵守し、市民とともに自主・自立のまちづくりの推進に努め、市民の負託に応えなければならない。
 
(議員の責務)
第25条 議員は、この条例に定めるまちづくりの基本理念を遵守し、市民の福祉向上に努めなければならない。
 
(職員の責務)
第26条 職員は、その職責が市民の信託に由来することを自覚し、この条例に定めるまちづくりの基本理念及びこれに基づいて創設される制度を遵守して職務を遂行しなければならない。
2 職員は、まちづくりを推進するため、その活動に積極的に参画するよう努めなければならない。
3 職員は、まちづくりの課題を解決するため、必要な知識、技能の習得に努めなければならない。
4 職員は、他の職員が市の行政執行の公正を妨げ、市政に対する市民の信頼をき損するような行為を行っていることを知ったときは、その事実を市長に報告しなければならない。
【解説】
この条項は、職員は、その職責が市民の信託に基づいていることを自覚するとともに、常に法令等を守り、責任を果たすことを定めています。
また、職員は、まちづくりに積極的に参画すること、常に自己研鑽に努めること、他の職員が法令等に違反していることが分ったときには、報告する義務があることを定めているものです。
第9章
最高規範性と市民自治推進委員会
(最高規範性)
第27条 この条例は、市が定める最高規範であり、市は、他の条例、規則等の制定改廃にあたって、この条例の趣旨を尊重し、整合性を図らなければならない。
【解説】
この条項は、この条例が、市の条例の頂点に立つ最高規範であることを定めているとともに、他の条例はこの条例との整合性を図らなければならないことを定めているものです。
(市民自治推進委員会の設置)
第28条 この条例の目的を達成するため、市に登別市市民自治推進委員会(以下「委員会」という。)を設置する。
2 委員会は、次の各号に掲げる事項について審議する。
(1)市民自治の推進に関すること
(2)市民と行政の協働のあり方に関すること
(3)この条例の見直しに関すること
(4)その他
3 前各項に定めるもののほか、委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、市長が別に定める。
【解説】
この条項は、この条例について検討してきた「登別市まちづくり基本条例検討委員会」の提言をもとに定めています。
検討委員会では、市民がこの条例の趣旨を理解し、市民活動に生かしていくには、市民自らが話し合いながら「条例を育てていく」という姿勢が重要であるとの考えから、「市民自治推進委員会」を設けることとしたものです。

第1項は、この条例の目的である「公正・公平を原則とする開かれた市民自治」の達成に向けて、「市民自治推進委員会」を設けることを定めているものです。
第2項は、委員会は、市民自治の推進、市民と協働のあり方、条例の見直し等について、審議することを定めているものです。
第3項は、委員の任期など委員会の詳細については、別に定めることとしているものです。

 

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