6.野原さんのビジネスダイアリー

公開日 2013年02月25日

野原洋さん(52歳)。ボランティアレンジャー緑さんのお父さん。
ウォーターフロント(水辺)創造計画の一環として建設された海洋牧場に勤務。登別港一帯は、遊覧船や遊漁船のマリーナ、ピアマーケット街(埠頭市場街)などが整備されているほか、近くの海洋生態館を中心に北欧風のテーマパークと連動した海洋レジャー基地として発展しています。
基幹産業である観光と地場産業が有機的に連携し新たなビジネスチャンスが生まれ、力強い地場の産業経済活動が展開されています。
野原さんは昼休みを利用して、海を一望できる丘の上にやってきました。ポカポカとした陽気に誘われて、食後の散歩がてら上ってきたこの丘は、遺跡公園として埋蔵文化財の保存センターや歴史の体験学習館があり、勉強する子供たちや市民、それに全国から研究者が訪れています。
野原さんは、眼下にひろがる雄大な太平洋とみどりに囲まれたまちなみを見ながら思いました。 それは、「この街が、かつてアイヌの人たちが、『金のしずくふれふれまわりに』(アイヌ神謡集)、と謡ったように、本当に金のしずくや銀のしずくが降り注ぐような美しい街になった。」ということです。
野原さんは、先人の努力によって営々と築き上げられたこのまちの美しさや暮らしのすみずみにまで行きわたった豊かさを、息子や娘さらにはその子たちに損うことなく伝えていきたいものだと改めて強く思いました。
この街のくらしのひとこまを、野原さんのビジネスダイアリーを通して紹介します。

日時 2×××年 6月10日(金曜日)
時間 午後2時
・ 会議名 「登別ブランド選定委員会」
場所 異業種交流センター

(会議記録)

会議室にずらりと並んだ試作品。異業種交流会の製品開発プロジェクトチーム(特別編成チーム)がこの1年間懸命に取り組んだ成果品である。今日は、その中から登別ブランド(商標・銘柄)として商品化するのにふさわしい製品を決定する委員会である。
この委員会で商品化が決まれば、速やかに特許申請や商標登録、知的所有権の登記準備がすすめられる。これを支援するのは起業支援財団。製品の生産にあたって新たな設備投資や人材確保が必要な場合には、市などの公的機関の財源支援システムやマンパワー(人的資源)派遣システムを活用できる。
最初の試作品が、紹介された。開発に携わった荒川さんが、マルチ(多数)画面を使って開発の意図や目的とするものそれに開発経過、製品の特徴などを説明してくれた。荒川さんは、30代前半というのにこれまでも幾つかの製品開発の実績をもつベテラン。登別ブランドのヒットメーカー(大当りの制作者)との異名をもつ人である。説明も堂にいっているそれに今回は、製品の説明に加えて市内の若手経営者グループの協力も得て、新商品の市場開拓可能性も事前検討して来たという。いつもながら感心した。今日の試作品もきっと日の目をみるだろう。
この登別ブランドと言うのは、今では全国的に有名になったが、そもそもは、50年位前からこのまちで取組まれていたCI運動の延長線上に出てきた発想と聞いたことがある。
登別は、昔から温泉を活用して全国のひとびとにくつろぎや憩いを提供してきた歴史がある。言わば人々をリラックスさせるまちだ。 そこで登別の起業家が協力してリラクゼーション(くつろぎ)と言う言葉をキーワードに人々を癒(いや)したり、くつろがしたり、ゆったりとさせるのに役立つ製品を開発し、全国に売り出そうということになったのである。
それらの商品には統一して「N.R.B.(Noboribetsu Relax Brand―ノボリベツ・リラックス・ブランド)マーク」が使用されている。それが登別ブランドである。今では、福祉、健康、アウトドア製品のほか自然保護のノウハウといったソフト商品までN.R.B.のマークをつけて全国に提供されている。それぞれの試作品の提案説明が終わったところで、ちょっと長めの休憩をとることとした。
異業種交流センターの別室で、今年の秋、コペンハーゲンで開催を予定している。「登別産業フェア」の市内出展企業の打ち合せが始まっていて、それをちょっと覗いてみようということになった訳である。今年は、ことのほかユニークな企画が多いんです、と実行委員会の事務局が言っていた。中に入ってみてなるほどと思った。
まず、目についたのは、プラスチック製品である。登別では、以前から強化プラスチック成型に優れた技術をもった企業が頑張っていたが、その企業が、今年、新技術で開発したプラスチックを使ってコンクリートの型枠を商品化したとのこと。
何がユニークかと言うと、プラスチックの原料がじゃが芋だと言うことだ。しばらくまえから水や微生物によって分解されるプラスチックが開発されていた訳だがそれを活用して建築廃材にならない型枠を独自の技術で開発したと言うことである。 環境先進国と言われるデンマークでは、きっと注目されるだろう。
次に、展示されていたのは、登別ならではの製品である。それは、新素材を活用した大型の熱電変換素子を使った発電装置である。熱電変換素子とは熱電効果を利用して熱エネルギーから電気エネルギーあるいはその逆に変換可能な素子のことでかつて、登別に進出したベンチャー企業が開発した技術である。
今、地獄谷で行われている地域発電システムは、この技術を活用して、温泉源や地下資源に全く影響のない方法で自前の電力生産を行っている。観光名所の地獄谷は、一見したところ、昔と変わらない姿で地球誕生のドラマをかいま見せているくれているが、地中にはこの素子が環境に配慮しながら埋め込まれていて、電力を起こしている訳だ。
今回出展される製品は、その技術を北方圏の永久凍土に活用しようとするもの。氷点以下の凍土と大気の温度差を利用して、この素子で電気エネルギーに変える発電装置である。安全でクリーンなエネルギー生産装置ということが注目されている。
次に紹介されているのは、実際の製品ではなくプロモーションホログラム(※1)を使ってのものであった。出展しているのは、市内の先端技術企業。この企業は、独自に開発した半導体の制御盤を使った物流システムの開発から始まって、今では、物流産業ロボットの生産から製造業における製品製造ラインの制御システム開発会社として国内でも有数の企業となっている会社である。
今、登別観光の名物にもなっているコンピュータ制御の無人新交通システムも、この企業の技術開発が基礎となって生まれたものである。 今回は、この交通システムを都市型の公共交通網に導入しようとするもので、シミュレーションをホログラフィ装置(※2)で紹介しようというものである。
次々と、登別の企業から生みだされるアイデアや技術、製品のすばらしさを改めて認識させられる思いであった。
(※1) プロモーションホログラム(宣伝用立体映像)
(※2) ホログラフィ装置(立体映像映写装置)

日時 2×××年 6月14日(火曜日)
時間 午後2時
・ 会議名 市民シンポジウム「あらたなる交流都市像を目指して」企画委員会
場所 シティホール・ラウンジ

(会議記録)

来週行われるシンポジウムの打合せである。
パネリスト同士の発言要旨のすり合わせも同時に行うということで今日のメンバーは、まちづくりコーディネーター(調整者)の河西(かわにし)さんを中心に、当日のパネリスト(公開討論会の発表者)とわれわれ実行委員。
パネリストの一人には息子の繁も入っている。そう言えば繁は、このシンポジウムの打合せのため今日は会社には出勤せず、市内の共同サテライトオフィス(※1)で仕事をすると言っていた。今は、繁のように札幌市や千歳市の企業に就職してもこの地を離れない人が多くなった。また、繁とは反対に札幌市や千歳市から通勤してくる人も多くなった。ますます、その傾向が強まる様相をみせている。
今回のシンポジウムは、そういったことを背景として、ますます強まる地域間交流に対応するため、今後のまちづくりに何が必要かを議論することを目的としている。
コーディネーターの河西さんは、言う。
「かつて、日本には高度経済成長という言葉があって、工業開発を重点とした国土開発が行われた結果、人や物や情報が都市に集中し、その反面で、地方の過疎化や地域経済の停滞が起こるといった状況があったそうです。また、当時は、日本の人口が増大傾向にあったことと経済の成長が続いていたことから、都市の発展の姿としてどこのまちも、自分のまちの人口を増やすことを目標にさまざまな開発計画をたてた時代があったそうです。今は、そういうこともなく、経済の成長といった概念も大きく変わっています。
一つの国あるいは一つの地域の産業経済活動の視点ではなく、皆さんも御存知のとおり、世界は一つという地球規模での豊かさをどう図っていくかという視点になっています。環境問題や経済活動といった大きな問題はもちろんのこと私たちが生活するうえで、どこに住むのか、どんな職業につくのか、どんな教育を受けようと思うのかなど地球規模で考え選択する時代になりました。まさに地球規模での交流の時代になったと言えます。
今回のシンポジウムは、そういった背景のなかで、新しい交流都市像といったものを検討する中から、この登別のまちづくりの方向性について考える機会にしたいと思いますのでよろしくお願いいたします。」
河西さんの説明のあとパネリストの人が、それぞれ発表しようとすることの概要を提出した。
札幌市から市内の食品加工会社に通勤している吉田さん。このまちに住み千歳市に通勤している繁。温泉科学医療センターに研修にきているロシア人のイワノヴィッチさん。観光連盟の事務局長の南田(みなみだ)さん。 リニアモーターカー(磁気浮上式の超高速列車)で通勤している繁や吉田さんは通勤コスト、情報基盤の整備、都市間の機能分担の問題について提言したいと言っていた。
イワノヴィッチさんは、温泉療法の研究を例に、その地域がその特性ゆえに培ってきたさまざまな知恵やノウハウ、研究成果などのデータベース化の重要さを訴えたいらしい。
南田さんは、都市間の機能分担論に関連して、このまちが日本や世界の発展に何ができるのか、このまちの特性を把握しながらその役割について問題提起してみたいと言っていた。 面白いシンポジウムになりそうだと思う。
(※1) サテライトオフィス(自宅と本社の中間でパソコンやファクシミリなどの情報通信機器を備えた事務所)

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